FIREのための積立シミュレーション — 4%ルールと年利7%で逆算する
FIREとは何か
FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、経済的自立を達成して早期退職を実現するライフスタイルの概念です。もともと米国発の考え方で、2010年代にブログや書籍を通じて広まりました。
ただし、FIREの本質は「早期退職」そのものではありません。「いつでも仕事を辞められる状態にある」こと自体に価値があります。 嫌な仕事を断れる、ライフスタイルを変えられる——その選択肢の自由を得ることがFIREの目的です。
FIREの種類
FIREにはいくつかのバリエーションがあります。どのFIREを目指すかによって、必要な資産額と到達までの期間が変わります。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| Fat FIRE | 余裕ある生活水準を維持したまま完全リタイア。必要資産は最も多い |
| Lean FIRE | 生活費を徹底的に抑えてFIREを実現。必要資産は少ないが節約が前提になる |
| Side FIRE(Barista FIRE) | 資産は不完全でも、副業や好きな仕事で少額を稼ぎながら生活を補う |
| Coast FIRE | 若いうちに十分な資産を積み立てたら積立をやめ、あとは複利に任せてリタイアを待つ |
年利7%を前提とする理由
積立シミュレーションの前提として**年利7%**を使います。
S&P500の長期年率リターンは名目ベースで約10%。そこから物価上昇分を差し引いたインフレ調整後のリアルリターンが、歴史的に約7%前後とされています。
将来の保証はなく、7%は保守的な前提とは限りません。本記事では過去の実績を参考にした一つのシナリオとして使用します。実際の計画では、より低いリターンやインフレ率の変化も併せて試算する必要があります。
取り崩し4%ルールとは
4%ルールとは、「年間の取り崩し額を資産総額の4%以内に抑えれば、30年以上資産が枯渇しない可能性が高い」という経験則です。1998年のトリニティ・スタディという研究に由来します。
逆算すると:
必要資産 = 年間生活費 ÷ 0.04 = 年間生活費 × 25
| 月の生活費 | 年間生活費 | 必要資産(4%ルール) |
|---|---|---|
| 15万円 | 180万円 | 約4,500万円 |
| 20万円 | 240万円 | 約6,000万円 |
| 25万円 | 300万円 | 約7,500万円 |
| 30万円 | 360万円 | 約9,000万円 |
| 40万円 | 480万円 | 約1.2億円 |
生活費の水準によって必要資産は大きく変わります。支出を下げることは、必要資産を減らしながら同時に積立額を増やす、二重の効果があります。
積立シミュレーション①
年利7%・毎月一定額の積立で、何年で目標資産に到達するかを試算します。
パターンA:Lean FIRE(月約17万円で生活)
- 目標資産:5,000万円(年間生活費200万円 ÷ 4%)
- 毎月の積立額:5万円
| 積立年数 | 積立元本 | 運用後の資産(年利7%) |
|---|---|---|
| 10年 | 600万円 | 約865万円 |
| 20年 | 1,200万円 | 約2,605万円 |
| 28年 | 1,680万円 | 約5,200万円 ✅ |
| 30年 | 1,800万円 | 約6,100万円 |
月5万円の積立では、約28年で目標の5,000万円を超えます。
パターンB:標準的なFIRE(月25万円で生活)
- 目標資産:7,500万円(年間生活費300万円 ÷ 4%)
- 毎月の積立額:10万円
| 積立年数 | 積立元本 | 運用後の資産(年利7%) |
|---|---|---|
| 10年 | 1,200万円 | 約1,731万円 |
| 20年 | 2,400万円 | 約5,209万円 |
| 24年 | 2,880万円 | 約7,440万円 ✅ |
| 30年 | 3,600万円 | 約12,200万円 |
月10万円の積立では、約24年で目標の7,500万円に到達します。
元本と運用益の比率に注目してください。 30年後、パターンBでは元本3,600万円に対して運用益が8,600万円を超えます。複利の力が後半に向かって加速する構造です。早く始めるほど、この差が大きくなります。
このサイトのFIREシミュレーターツールでは、積立額・年利・目標資産などを自由に設定して確認できます。
国民年金とFIRE後の追加支出
FIREを検討する際に見落とされがちな支出があります。会社員時代は会社が折半していたものが、FIRE後はすべて自己負担になります。
国民年金保険料
会社員時代の厚生年金に代わり、FIRE後は国民年金への加入が義務となります。2026年度の保険料は月額**17,920円(年約21.5万円)**です。
そして65歳になれば年金を受け取れます。老齢基礎年金の満額は月70,608円(年約85万円)(2026年度)。これを4%ルールで逆算すると約2,100万円分の資産に相当します。
国民健康保険
会社の健康保険から外れた後は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養などから条件に合う方法を選びます。国保の保険料は前年所得や居住市区町村、世帯構成で大きく異なるため、自治体の試算ページで確認が必要です。以下では年20〜40万円を仮のシナリオとして使います。
まとめると
| 項目 | 年間目安 |
|---|---|
| 国民年金保険料 | 約21万円 |
| 国民健康保険 | 約20〜40万円 |
| 合計 | 約40〜60万円 |
月換算で3〜5万円の追加支出です。生活費の見積もりに必ず加えておく必要があります。
積立シミュレーション②(追加支出・年金を考慮)
前提条件
- 生活費:月25万円(年300万円)
- FIRE後の追加支出(国保・国民年金):年約50万円
- 実質的な年間支出:350万円
- 必要資産(4%ルール):8,750万円
65歳以降に年金(年約85万円)を受け取ると:
- 実質支出:350万円 − 85万円 = 265万円/年
- 4%ルールの必要資産:6,625万円
年金は受け取り始めた時点で、資産として約2,100万円分の効果をもたらします。
パターンB'(追加支出込み)
- 目標資産:8,750万円
- 毎月の積立額:10万円
| 積立年数 | 積立元本 | 運用後の資産(年利7%) |
|---|---|---|
| 20年 | 2,400万円 | 約5,209万円 |
| 26年 | 3,120万円 | 約8,810万円 ✅ |
| 30年 | 3,600万円 | 約12,200万円 |
追加支出を加えると、シミュレーション①の24年から約26年に延びます。2年の差です。
65歳以降の年金収入は、生活費を支える重要な要素です。 ただし、受給開始年齢や受給額は加入実績・制度改正などで変わります。ねんきん定期便等の見込額を確認し、余裕を持たせて計画に組み込むのが現実的です。
より精緻化するために
収入と支出を「見える化」する
FIREシミュレーションの精度は、支出の正確さに直結します。「だいたい月25万円くらい」という曖昧な数字では、必要資産の試算がぶれます。
家計簿アプリを1〜2ヶ月使えば、思った以上に「使っていなかった固定費」が見えてきます。まず自分の支出を月単位で正確に把握することが、FIREへの最初の一歩です。
使っていない固定費をすぐに解約する
月の支出を1万円削減できると、4%ルールの逆算では必要資産が250万円下がります。支出削減は「節約」ではなく「必要資産の圧縮」です。
よく放置されがちな固定費:
- ほとんど使っていないサブスクリプション(動画・音楽・雑誌など)
- 行っていないトレーニングジム
- 契約したまま使っていない保険・サービス
解約に手間がかかるように設計されているサービスほど、気づかれにくい出費になっています。今月中に一度見直すだけで、FIREへの道が数年縮まることもあります。
まとめ
- 必要資産 = 年間生活費 × 25(4%ルール)
- 年利7%・月5万の積立で約28年、月10万で約24年で5,000〜7,500万円に到達
- FIRE後の国民年金・国保の追加支出(年40〜60万円)は必ず見込む
- 65歳以降の年金(年約85万円)は資産約2,100万円分に相当する強力な下支え
- 月1万円の支出削減は、必要資産を250万円圧縮する
参考リファレンス
- William Bengen (1994)「Determining Withdrawal Rates Using Historical Data」Journal of Financial Planning
- Cooley, Hubbard, Walz (1998)「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」(トリニティ・スタディ)American Association of Individual Investors Journal
- 厚生労働省|国民健康保険の保険料(税)の賦課(徴収)状況
- 日本年金機構|国民年金保険料の額
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