新興国株に投資しない理由 — 成長と投資リターンは別の話
結論:新興国株は保有していない
先に私のスタンスを明確にします。私のポートフォリオに新興国株は含まれていません。
インドやベトナムが高成長を続けることは認めます。インフラ整備・銀行・電力といったセクターは今後も大きく伸びるでしょう。それでもなお、私が投資判断をしない理由が3つあります。
理由①:為替は国力と人気で動く。米ドルには勝てない
株式のリターンは「株価の変動 × 為替」の掛け算で決まります。
インド株が現地通貨建てで10%上昇しても、インドルピーが米ドルに対して10%下落すれば、円換算・ドル換算のリターンはほぼゼロになります。
私は為替を「その国の国力と、市場参加者の人気投票」で決まるものだと考えています。現時点では、新興国通貨が米ドルをアウトパフォームし続けるシナリオに、私は積極的に賭けていない。
実際、2025年においてもインドルピーは対米ドルで下落傾向にあります。過去6カ月のUSD/INRレートは約5.8%上昇しており、ルピー建ての株価上昇分を相当程度打ち消しています。
もし新興国通貨が継続的に米ドルをアウトパフォームするようになったなら、その時点で投資判断を見直す可能性はあります。 通貨の強さはその国の経済的地位の反映であり、逆転の兆候は投資シグナルになり得ます。
理由②:情報の非対称性が大きすぎる
新興国企業への投資では、日本や米国の企業と比べて入手できる情報量が圧倒的に少ない。
- 英語・日本語で読める財務情報・アナリストレポートが限られる
- コーポレートガバナンスの透明性が低い国も多い
- 地政学リスク・政策変更リスクの読みが難しい
自分が十分に理解できない資産にリスクマネーを投じることは、投機に近くなります。理解できないものには投資しない、という原則を守ると、必然的に新興国株の優先度は下がります。
理由③:新興国企業がS&P500を本気で脅かすことは稀
「インドやベトナムの企業は成長する」という命題は正しいかもしれません。しかし「だからS&P500より高いリターンを得られる」とはなりません。
新興国企業がグローバルで大きなシェアを取るには、AppleやMicrosoft、Googleといった既存の巨人を押しのける必要があります。競合を避けるために、多くの新興企業はニッチな市場に特化します。しかしニッチな市場は、定義上、大きくなりにくい。
インフラや銀行が伸びるというシナリオも同様です。それらのサービスが日本やアメリカに広がることはほぼありません。理由はシンプルで、日本にも米国にもすでに高度なインフラと金融システムがあるからです。成長の恩恵はその国の国内に留まります。
数字で見るMSCI新興国 vs S&P500
| MSCI新興国 | S&P500 | |
|---|---|---|
| 10年年率リターン(2010〜2019年) | 約3.7% | 約13.6% |
| 長期年率リターン(2001年〜) | 約7.6% | 約7.8% |
| 年率標準偏差(ボラティリティ) | 約22.4% | 約14.1% |
長期で見れば新興国と米国のリターンは拮抗しますが、ボラティリティは新興国が約1.6倍大きい。同程度のリターンをより大きなリスクで取りに行く合理的な理由は薄い。
参照: MSCI Emerging Markets vs S&P 500 historical performance - Curvo / Rethinking Three Misconceptions About Emerging-Market Equities - AllianceBernstein
アンテナは張っておく
投資しない = 関心がない、ではありません。
新興国発のソリューションが既存の先進国市場を本当に侵食し始めたとき——それはニッチを超えてグローバルに通用するビジネスが出てきたサインです。その時は投資を検討する価値があります。
また、新興国通貨が継続的に米ドルをアウトパフォームするトレンドが確認できた場合も、改めて評価し直す余地があります。
現時点では、S&P500を軸に、理解できる資産だけを保有するというシンプルなポリシーを維持します。
まとめ
| 観点 | 判断 |
|---|---|
| 経済成長 | インド・ベトナムは成長する |
| 為替 | 米ドルをアウトパフォームする根拠が薄い |
| 情報 | 非対称性が大きく判断が難しい |
| 競争構造 | S&P500企業を脅かすほどのグローバル展開は稀 |
| 結論 | 現時点では投資しない。ただし定点観測は継続 |
参考リファレンス
関連記事
NISAで投資信託を選ぶチェックリスト — S&P500とオルカンで迷ったら
NISAで投資信託を選ぶ前に確認したいチェックリスト。S&P500とオルカンの考え方、信託報酬・純資産総額・トータルリターン・避けたい投資信託を整理します。
投資初心者が最初の30日でやること — 1,000円のNISA積立を動かすまで
投資初心者が最初の30日で完了したい手順を、楽天証券・楽天銀行・NISA・クレカ積立の設定順に解説。最初は月1,000円のS&P500投資信託から始め、判断ではなく継続できる仕組みを作ります。
コア・サテライト戦略 — 私が投資信託から個別株へと広げていった理由
「まず投資信託でコアを固める、慣れてきたら個別株でサテライトを積む」——私のポートフォリオがこの形に落ち着いた経緯と、コアとサテライトの選び方を整理します。
それでも買わないのは、「伸びる国」と「儲かる投資」は別だと気づいたからです。成長の恩恵を享受するのはその国の国民と現地企業であって、外国の個人投資家ではないことが多い。為替がその分を削り取り、情報の薄さがさらに削る。
S&P500に集中するのは、消極的な選択ではなく、「自分が理解できる市場に絞る」という積極的な判断です。